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「エンジニアリング! ナム・ジュン・パイク」

2月9日に「第17回文化庁メディア芸術祭」の受賞作品展を見学したあと、 関連イベントとして開催されたシンポジウム、「エンジニアリング! ナム・ジュン・パイク」に参加してきました。

第17回文化庁メディア芸術祭

上記ページからシンポジウムの概要について引用*1

ナム・ジュン・パイク氏の思想やコンセプトを深く理解し、 共同制作者として新たな表現を開拓した阿部修也氏。 その活動は、アーティストとエンジニアのコラボレーション、 芸術と技術による新たな表現形態の先駆的実践だと言えます。 本シンポジウムでは、阿部氏とナム・ジュン・パイク氏の共同制作によって 発表された作品群を紹介するほか、 受賞作品展にて展示中の 『パイク・アベ・シンセサイザー』(1969年)を中心に 阿部氏本人による解説を行います。 また、エンジニア/アーティストとして、デバイス制作を主軸に、 数多くの広告プロジェクトや作品制作を行う石橋素氏を迎え、 阿部氏による創作活動がつなぐ、芸術と技術による表現の変遷を辿ります。

出演者

  • 松井茂さん(東京藝術大学芸術情報センター助教) モデレータ
  • 石橋素さん(エンジニア/アーティスト)
  • 馬定延さん(メディアアート研究)

テーマの中心であった阿部修也さんは、都合により欠席。

概要

当日書いたメモや記憶から整理したものなので、実際の内容とは相違があると思います。

  • 阿部修也さんの経歴紹介
  • ナム・ジュン・パイクの作品紹介
    • TVロダン
    • ヴィラミッド
    • キャンドルテレビ
    • 参加するテレビ など
  • 阿部さんの人物像とパイクとの関係性
  • 1960年代のコンピュータアート(CTG)
  • エンジニアとアーティストの関係をメディアアートの研究としてどうとらえるか
  • 石橋さんが関わった作品などの紹介とコメント、現役のエンジニアとしてのあり方
  • まとめと質疑応答

これらの内容に加えて、松井さんから時代背景などの補足説明があったり、三者間で質問やコメントがされていました。

シンポジウムが終わって考えたことなど

今ではアートにプログラムが使われたりすることも当たり前になっていますが、 どんどん新しいことができるようになった時代だからこそ、その歴史や先駆者が どのような取り組みをされていたのか知ったり、現代にどうつながっていくのかを 考えることは面白かったです。

裏方でいることと評価されること

一番印象的だったのは、馬さんと石橋さんの以下のコメント。*2

馬さん「阿部修也さんのようなすばらしい人が、正当な評価をされていなかった」
石橋さん「自分達は基本的には裏方である」

あくまで僕のイメージですが、エンジニアって「裏方」の意識は強いと思うんです。 表舞台に立つのは作品だったりシステムであって、自分達はそれを支える立場みたいな。

一方、研究者は歴史や人を調べていくうえで「この評価はおかしい」と判断することもあるはずで、 馬さんにとって阿部さんはそのような人間の一人だったということになります。

いくら自分が裏方に徹したいと思っていても、世の中の誰からも見むきもされないままでは 活動を続けるのは難しい。かといって、過剰な注目や評価を受ければ、本来の活動が阻害されるかもしれない。 世間からイメージがつくことで、良くも悪くもそれにひっぱられてしまう可能性もある。

今回、阿部さんが功労賞を受賞して改めてその活動が評価されたわけですが、 もしナム・ジュン・パイクと関係なく、個人としても当時から評価や注目をもっと集めていたら、 それが阿部さんにとって喜ばしい状況になっていたかは分からないわけです。

エンジニアとして「裏方である」というスタンスと、研究者として「すばらしい人は正当に評価されるべき」は、 どっちも必要なことだけど、どっちかに傾きすぎてもダメ。そのあたりのバランスがどうあるべきか 質疑応答の時に聞いてみるべきでした。

人からの評価は後付けでどうにでも変わる

僕は今30歳で無職です。肩書も何も持っていません。 勝手に「走るプログラマー」は名乗っていますが。 おそらく世の中には僕の現状を白い目で見る人も多数いると思います。

でも、今後どこかのタイミングで大きな実績を残したり、誰もが知ってる大企業に入社したり、 何かのきっかけで「あいつはすごい」と思われるようになったら、周囲の見方は一気に変わるはずです。

別に人生の一発逆転を狙っているわけじゃなくて、ここから見えてくるのは、人からの評価って、 肩書だったり、時代だったり、良くも悪くも後付けでどうにでも変わってしまうものなんだと。

アートでもなんでも、ある作品があったとして、「作品そのもの」がすごいのか、「その人が作ったから」すごいのか。 はたまたそれ以外の理由なのか。正しく評価することも、されることも、実はものすごく難しいことなのかもしれません。

おわりに

はずかしながら、このシンポジウムに参加するまで阿部修也さんがどういう方なのか知らず、 モデレータの松井さんから、ICCに阿部修也さんのインタビューの動画があることを 教えていただいたので、さっそく観てみました。

HIVE » インタヴュー・シリーズ » 阿部修也 インタヴュー

パイクと出会った当時のことや、エンジニア以外の分野に関わることなどについて語られており、 ご本人が出席されていたら、もっと面白いシンポジウムになっていただろうと思うばかり。 インタビューが撮影されたのが2005年8月なので、現在の見識も含めて直接話しを聞いてみたかったです。

シンポジウムの主旨とは外れたことばかり書いてしまいましたが、自分の中でいろいろと 考えをめぐらせる良い機会になりましたし、ここに書いてないこともたくさんあるので、 前日の大雪で参加を断念しなくてよかったと思います。

*1:2015年には内容が変わっているかもしれません

*2:正確な表現は異なります